『宇宙人かよ!』

マンガへの愛情が薄れたとは思わない(思いたくない)のだが、ここ何年かマンガ雑誌を発売日に読まないことが多くなった。それでも立ち読みで済ませるものは店頭から消える恐れもあるので、翌々日あたりまでには目を通すものの、購入したものとなると手許にある安心感からか、次の号が発売される直前まで手に取らないことも珍しくない。そういう場合は読み方も雑になり、つい一話完結ものや読み切りもの、コラムなんかを飛ばしてしまいがちになる。
で、先週発売のモーニングを今頃(水曜日)になって読んだわけだが、危うくこの傑作を見逃すところだった。

『宇宙人かよ!』林 明輝

読み切りで、パラパラとページをめくったらかなりの分量がある(あとで調べたら60ページ近くあった)。しかも絵のタッチが私の大嫌いな、いかにも最近の流行りって感じの達者だけど中身のないオシャレ系だったので、普段なら迷わずパスだったと思う。
それを何故読む気になったかは自分でもわからんのですよ。
もうこれは運命としか言いようがないです。

ストーリーは、やる気のない土木作業員の若者が、サボって昼寝していた草むらで地球人に化けていたエイリアンの青姦を目撃するところから始まる。
若者はこのことを周囲の人間に信じてもらおうとするが、当然誰も信じない。そしてお決まりの精神病院への強制入院。そこで彼はひとつの決意をし、何とか退院することができると、達成される見込みがどれほどあるかさえも見当がつかない、果てしなく大きな目的に向かって歩み始める。
ここまでで大体半分弱。
ハリウッド映画なら、この先は主人公と青姦エイリアンを切り離すことなく展開するだろう。私も『アライバル』を思い浮かべた。NASAかなんかの科学者が宇宙からの電波を受信、エイリアンの存在を主張するが、上司に黙殺され職場を解雇されてしまう。納得がいかない科学者は個人で観測を始め真実に近づくが、やがてエイリアンの魔の手が彼にせまる・・・。たしかそんな内容だったと思う。
しかし、このマンガはそういうアクション、サスペンスの方向には見向きもしない。
詳しい内容は書かないが、同じくハリウッド映画に例えれば、ちょっと『コンタクト』に近い雰囲気がある。ただし『コンタクト』がまだ見ぬエイリアンを信じる者の話なのに対し、『宇宙人かよ!』は既に見てしまったエイリアンを(世間に)信じさせようとする者の話だ。だから『コンタクト』にあった夢とかロマンはさほど感じられない。
そして『宇宙人かよ!』には、迫力のクライマックスも驚愕のエンディングもない。
しかし、静かに流れる長き歳月の中で、一瞬たりとも揺らぐことのない主人公の「信念」には、そういうものよりずっとずっと素晴らしい輝きがある。

☆☆☆☆★

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